山の根の躯体

神奈川県逗子市の谷戸(山に囲まれた谷状の地形)を見渡す崖の上に立つ住宅。 クライアントは夫婦と子供2人の4人家族である。

大きな敷地内には10m以上の高低差がありアプローチの道路から約8m登ったところに建物の建つ平地があり、そこからは谷戸に広がる住宅街が一望できる。クライアントからの要望はその眺望をいかした家にして欲しいということであった。

建築行為自体が困難な高低差のある土地で、周囲の崖により敷地内は一部レッドゾーンと急傾斜地崩壊危険区域内となっており、構造、法規、施工など様々なことを総合的に検討する必要があった為、この場所に建築を建てるということ自体が挑戦的なプロジェクトとなった。

 

敷地内に唯一存在する平らな土地は建物を建てやすく眺めも良いが、3方を崖に囲まれているため少し眺望が制限されていた。そこで平地の南側の崖をかわし、より良い眺望を獲得するために建築を崖から東側に4m程キャンチレバーで突き出した。崖から東側に飛び出ることで建物の配置が西側の崖から離れ、レッドゾーンと急傾斜地崩壊危険区域避けることもできた。
建物を取り囲む崖からの安全性とキャンチレバーの施工性も考慮し建築は単純な箱型のRC造の平屋建てとし、キャンチレバー部分は高さ2m大きな開口部を設け、窓下の腰壁部分を高さ180cm×幅30cmの梁としてキャンチレバー部分を支えている。地盤調査の結果、地質は泥岩で十分な地耐力があったため基礎は直接基礎としている。  

 

自然豊かで開放的ではあるが敷地内の高低差や崖に関する条例等から長らく建築が建つことがなく売れ残っていた土地。それでも敷地の魅力に惹かれこの場所で生活したいと願うクライアントのために建築を実現した。この場所がクライアント家族にとってかけがえのない場所になることを願っている。

計画地:神奈川県逗子市
竣工:2024年6月
用途:専用住宅
規模:RC造平家建て
敷地面積:495.03㎡
建築面積:93.80㎡
延床面積:93.80㎡
設計:稲山貴則建築設計事務所
施工:大同工業
構造:建築構造研究所
撮影:鳥村鋼一