笹一酒造 酒遊館

山梨県大月市で350年以上日本酒をつくり続けている老舗酒蔵「笹一酒造」の敷地内にある直売所の内装計画。

笹一酒造は東京の都心から約1時間、甲府方面からも40分程の距離にありこれまで顧客はバス旅行の団体客中心であったが、今後は個人客もターゲットとし幅広い層に日本酒の良さを知ってもらえる場所を目指し計画はスタートした。

都心からの距離があるため、リニューアルに伴い非日常的な空間であることや、ゆっくりと長く滞在できる空間が求められた。

 

笹一酒造は350年以上日本酒をつくり続けている老舗酒蔵であるが、現在では日本酒だけでなくワインやリキュール、焼酎とたくさんの種類のお酒を製造販売しているため、既存の物販店舗内はやや乱雑にお酒が陳列されていた。

そこで団体客から個人客まで幅広い客層のニーズに合わせた2種類の棚を用意し、まずは商品の陳列を整理することにした。

1つ目は博物館の展示の様に、お酒の素材や製法の説明とセットで商品を陳列し、じっくりと商品を吟味することのできる棚を壁面に用意した。壁面の棚は壁と同色の塗装で仕上げ壁と一体化し、お酒のラベルが美しく見えるように複数の間接照明を仕込んでいる。

2つ目は店舗内に島状に点在し発見的に商品との出会いを誘発する棚である。この棚は床と同素材のモルタルで仕上げ店舗内の風景を形成する一部として扱った。

そしてスケールの大きな店舗に合わせバーカウンター(有料試飲コーナー)と一体になった約12mのレジカウンターと、ステンレスを切り出した笹一のロゴのレリーフを設置した高さ6mの巨大な柱を玄昌石で仕上げ店舗の中心に添えた。

 

ギャラリーは床を900mm上げカフェと段差を設け、カフェと少し距離を取り敷地と隣接する森に向け大きな窓を設けた居心地の良い空間とした。

ギャラリーの天井はカフェと同様に稲の藁で編んだ「むしろ」を貼りカフェとの一体的な空間とした。

更に深く出た軒下空間はエントランスの機能だけでなく新たにつくり付けのベンチを設け、ソフトクリームを食べるお客さんや周辺の山からの登山客の休憩場所として機能する。

 

伝統的な酒蔵であることから和の要素も求められたが、安直に和を表現せずにシンプルな素材で酒蔵や日本酒の持つ歴史を感じることのできる重厚感のある空間を目指した。

 

 

 

sake zone

shop interior view

obelisk with relief

wine zone

shop interior view

shop interior view

behind the obelisk

12m counter

bar counter

12m counter

shop interior view

gallery

gallery window

exterior

bench

所在地:山梨県大月市笹子町吉久保26
竣工:2020年9月
用途:物販店舗
規模:鉄骨造平屋建て(店舗一部の内装)
延床面積:273.00㎡
設計:稲山貴則+諏訪晴貴/稲山貴則建築設計事務所
施工:丸正渡邊工務所
撮影:平山 亮