倉のある家
山梨県甲府市に建つ住宅の建て替えの計画。
既存の住居は、東西に長い敷地のため南側の隣家との距離が近く室内に十分な日差しを取り込むことができない状況であった。
クライアントからは十分な日差しを感じることができる生活と、育てている樹木を伸び伸びと植えることのできる庭を求められた。
建物を部屋単位で分割し敷地内に再配置することで、既存の住居とほぼ同じ面積ながら全く異なる庭と建物の関係をつくり出すことを試みた。
具体的には日差しを一番必要とするLDK(母屋)を敷地の一番日当たりの良い場所に配置し、そこを基準に配置計画を検討する。
LDK(母屋)は光を目一杯取り込むことができる様に天井高さを高くし、中庭を挟み高さを抑えた「倉」と呼ぶ車庫や寝室の入った棟を配置する。
内部は県産材のヒノキを使用した真壁とし、柱・梁のフレームを現している。
中庭に向けた大開口は、冬の日差しを目一杯取り込み室内を暖め、夏は長い庇で日差しを遮り大量の風を室内に導く。
大開口からは、既存の生活では見ることのできなかった富士山や夜には月や星もよく見える様になり、より外部に対して開かれた家となった。
建物を分割し高さを調整し再配置することにより、敷地内にある環境のポテンシャルを引き出し新しい生活を手に入れることができる。
配置計画により既存敷地の価値を再発見する、敷地のリノベーション(再生)とも呼べる計画。
計画地:山梨県甲府市
竣工:2018年3月
用途:事務所併用住宅
規模:木造2階建て
敷地面積:329.33㎡
建築面積:138.38㎡(申請部分 104.77㎡)
延床面積:158.39㎡(申請部分 124.78㎡)
設計:稲山貴則 建築設計事務所
施工:中村工務店
構造:大原和之+高橋修一/BSI
撮影:砺波周平
掲載誌:居心地のいい家をつくる 注目の設計士&建築家100人の仕事